初めての看護師ツアーナース(結婚式編)

■様々な場所で看護師が活躍

看護師の働き場所は病院、クリニック、介護福祉施設、保育園、訪問サービスなどの多岐にわたります。ちなみに、日本看護協会が調査した「2021年看護職員実態調査」では、看護師が一番多く働いている現場は病院で全体の85%以上を占めています。近年では、新型コロナウイルスが蔓延しワクチン接種会場、宿泊療養施設、コールセンターなど活躍の場が更に広がっています。2022年10月に「ザ・トラベルナース(テレビ朝日系)」がスタートし、トラベルナースという働き方も今後注目されていることが予想されます。

当日本ツアーナースセンターでは、保険外サービス(自費サービス)として家族旅行、病院の転院、お墓参り、冠婚葬祭、宿泊行事など個人や団体のご依頼に看護師の付き添いサービスを提供しています。また看護師だけではなく、状況によっては介護スタッフが付き添う場合もあります。依頼地域は、北海道から沖縄まで全国を対応しており、また日本から海外旅行に行きたいというご依頼も頂戴しています。

今回はとくにご依頼が多い「結婚式」に着目し、ツアーナースを知らない方やこれからツアーナースを始めてみたいと思っていただけるようお話ししていきたいと思います。

■■ちょこっと余談■■日本ツアーナースセンターに登録している看護師さんの経歴は?

日本ツアーナースセンターには、病院の外来や病棟、手術室等様々な経歴をもつ看護師さんが登録しています。これまでの経験を生かして、気分転換や社会貢献、旅行が好き、イベントが好きと様々ですが、皆さんに共通していることは看護師としての経験を生かしたいというところではないかと思います。

➀結婚式・披露宴時の看護師の役割

はじめに、病院看護師とツアーナースの違いについてお話しいたします。病院では医師、看護師などの医療スタッフが充実しており、また様々なメディカル機器や治療に必要な薬剤などが備えられています。患者が急変した際には、迅速にその対応を行うことができます。しかしツアーナースは看護師一人でご利用者とご家族様に同行することが多いため単独での判断が求められ、看護師として、的確な状況判断や観察力や危機的予測が必要となります。
また病院とは違い医療器具が充実しておらず、限られた医療資源の中どう対応していくのかが求められることから、看護師としての経験が大切な要素なり、その場の状況に応じた臨機応変な対応が求められます。

しかし、もっとも大切な役割は、ご利用者様やご家族の想い、願いに寄り添うこと。看護師は影のサポート役であり、決して目立つことなくまさに黒子となり、ご利用者やご家族の想いを尊重し、その人個人とどう向き合えるかが大切です。

■■ちょこっと余談■■ところで、ツアーナースは吸引や注射をしていいの?

医行為が行える場所は諸法令により限定されており、結婚式場へ移動する際に利用するタクシー、電車、飛行機、送迎バス内では医行為ができないものと考えられており、看護師による医行為は医師の指示のもとであっても提供はできません。(2022年10月現在)医療の提供できる場所は、病院等の医療提供施設または医療を受ける者の居宅等に限定されています。(医療法1条の2第2項参照)ただし、救急時の応急処置に限っては行うことができると考えられており、その際に医師の指示は不要となります。(日本ツアーナースセンターホームページ参照)

➁結婚式の支援をする看護師の事前準備と当日の仕事内容

まず日本ツアーナースセンター事務局が事前に病院看護師、医療相談員、ご家族様へご利用者の身体状況を聞き、「診療情報提供書」「看護サマリー」を確認しながら当日のリスクや起こるかもしれない可能性などを予想していきます。例えば、ご利用者が長時間に渡り結婚式・披露宴に参列していると身体が疲れてくることも考えて休憩できるよう別室にベッドを準備したり、当日ご利用者の容態が急変し救急搬送が必要となった際すぐに対応できるよう事前に式場周辺の病院を調べたり式場スタッフへ確認を行うこともあります。
また、ご依頼主より希望があれば当日看護師救護備品「救護セット(血圧計(上腕)、腋窩体温計、パルスオキシメーター、その他装飾品、衛生品等含む)」を準備いたします。

その後、看護師にご利用者の情報、結婚式当日のスケジュール等を把握いただき、問題点や不足情報があればその都度事務局へ確認をしていただきます。
看護師は、問題点や不足情報があればその都度事務局へ確認をしていただき、相違が起きないようにしています。

結婚式・披露宴時ではご利用者の「体調管理」「ADLの介助」「服薬管理」などを行います。
医療的な部分のサポートだけに限らず、ご利用者の身体状況によって身体介護も必要となってきます。
また、日本ツアーナースセンターでは看護師による医行為は行っておらず、医療的なサポートは一次救命処置・ファーストエイドを対応いただきます。
看護師による医行為が行えなくても、ご利用者の異変に一早く気づき適切な対応を行うことでご家族様も安心されると思っています。

■■ちょこっと余談■■ところで、結婚式の看護師の服装は?

当日看護師の服装についてですが介助があるため動きやすい服装を希望する方がいますが、Tシャツやジーパンなど結婚式・披露宴時にふさわしくない服装ではせっかくの式が台無しとなってしまいます。スーツでなくても結婚式にふさわしい服装(黒いズボン、白いブラウス、黒いスーツなど)かつ介助しやすい服装、高いヒールでは無く介助しやすいスニーカーにするなどご利用者が急変した際でもすぐに動けるように準備します。

③ツアーナースで結婚式に看護師として付き添った経験のある2名の感想

日本ツアーナースセンターの登録看護師で、実際に結婚式の現場に同行された2名の感想をご紹介させていただきます。初めて結婚式に同行された看護師もおり、日本ツアーナースセンター事務局(ヘルパー)も現地へ伺いサポートさせていただきこれまで事故等なく結婚式・披露宴最後まで参列することができています。

・Aさん(女性、50代)
【ご利用者】男性 80代
【感想・反省点】
「自分の結婚式にお父さんを連れていきたい」
事前にいただいていたフェイスシートからは、具体的な起居動作のイメージをすることが難しく身長・体重等の記載があると良かったです。ご利用者は要介護4のため介助が必要であることは想像していましたが、ご家族様もいらっしゃるため一緒に介助していただけると思い込んでいました。しかし、実際はご家族様も挙式の準備等があって中々ご利用者のそばにはおれず、ご利用者の起床後の清拭から更衣、車イスへの移乗までを看護師が一人で行うというものでした。
また、ご利用者のADLはフェイスシートの情報と相違があり、自力での動作がほとんどできない時には全介助しました。ご利用者の負担も考えると部分的にでもご家族様の協力を得られるよう事前確認は必要であると思いました。
事前の情報と実際の状況に差があったとしても、現場の状況を見極め柔軟に対応する事が必要であると感じました。

当日の医行為は血糖値測定がありタイミングを見てご家族様に打っていただくようにお願いしていたが、挙式当日ということもあり花嫁様の準備中にお呼びたてすることができない場面もありました。

今回初めて結婚式の付き添いをさせていただきましたが、学ぶことが多く、どんな場でも、どんな時にも、どんなケースでも対応できるようにしていきたいと思いました。
これまで経験してきた、重心や、心内での寝たきりの方へのケアが活かされたことは良かったと思います。
事故なく、無事に終えられたのは多くの方々の協力のお陰と感謝しています。

・Bさん(女性、40代)
【ご利用者】男性 60代
【感想・反省点】
「娘さんの結婚式に参列したい」というご希望の終末期後期のご利用者様に付き添わせていただきました。オピオイド使用によるペインコントロール中であり、昏睡もみられるご体調でした。モーニングに着替え、お気に入りの腕時計に付け替えたご利用様はご病気の状況を忘れるくらい、明るいお顔になり、新婦のお父様のお顔になりました。新婦さんと手を繋ぎ、車いすでバージンロードを歩かれ見せた笑顔は、ご本人、ご家族にとってかけがえのないひとときだったと思います。お身体の状況が厳しいなかでも、実現でき本当に良かったと思えた瞬間でした。またそんな瞬間に立ち会え、そばに寄り添うことができ、看護師である喜びも感じました。医療行為が行えず、終末期では第一優先であるペインコントロール(レスキュードーズ投与)が行えないもどかしさがありました。幸い、出発から病院に戻られるまで、痛みや苦痛が強くならなかったことが救いでした。今後、法の改正が進み、ご利用様に必要な医療ケアが病院や施設以外の現場でも行えるようになってほしいです。

■最後に

ツアー当日までの流れと2つの事例をご紹介いたしましたがいかがでしたでしょうか。まだまだツアーナースは世間に認知されていないのが現状ではありますが、日本ツアーナースセンターのサービスを利用されたご家族様からは「諦めていたことが叶い、看護師がいることで安心して参列させることができました」とお言葉をいただいております。実際に日本ツアーナースセンター事務局も現地へ伺うとそこには感動の場面がたくさんありました。普段車イスで移動されているご利用者が車イスから立ち上がって親族と写真撮影されたり、認知症で中々会話がかみ合わないご利用者が新郎新婦へ挨拶の際はこれまでの様子から一変し、まるで事前に準備されてきたかのような挨拶をされている姿を見て看護師と一緒に感動して涙がこぼしたこともありました。
認知症や病気を患い身体が思うように動けないから諦めるのではなく、どうしたら結婚式に参列することができるのかをツアーナース、日本ツアーナースセンター事務局と一緒に考えていくことができたらと思っています。
ただ、全ての現場で看護師による医行為が行えないことからご利用者・ご家族様の全ての想いにお応えすることは難しいため、今後時代と共に法が整備され変わっていくことを私たちは願っています。

全国各地のご利用者が安心して結婚式に参加できるよう是非とも看護師の皆さまにお力添えいただきたく思います。
今回のブログを読んでいただき少しでもツアーナースに興味を持たれた方がいらっしゃれば是非日本ツアーナースセンターへお問い合わせください。

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