「旅行に行けない」と決めていませんか?
医療的ケアが必要な方にとって、
旅行や遠方への移動は、とてもハードルが高いものです。
「体調が不安だから無理」
「何かあったら怖い」
「看護師さんに来てもらうなんて大げさでは…」
「費用も一人分増えてしまうし…」
多くのご家族が、行く前に“諦める選択”をしています。
それは決して間違いではありません。
心配だからこその判断です。
でも、医療の現場で私は何度も見てきました。
それは――
「行っておけばよかった」という後悔です。
大切な人が亡くなったあと、
「あのとき連れて行ってあげればよかった」
「本人は本当は行きたかったのかもしれない」
そう涙するご家族を、何人も見てきました。
後悔は、本当に後からしか気づけません。
一方で、旅行に行った方はどうか。
帰ってきたときの表情がまるで違います。
利用者さん本人の顔つきが変わる。
発言が前向きになる。
ご家族の空気が柔らかくなる。
そして不思議なことに、体調まで安定するケースも少なくありません。
これはデータではなく、
現場で見てきた“実感”です。
ツアーナースの役割は、
ただ医療的に安全を守ることではありません。
「できない」と思われていることを
「できるかもしれない」に変えること。
旅行は、贅沢ではありません。
人生の時間そのものです。
家族と過ごした時間は、
かけがえのない「体験」となり、
一生続く「思い出」になります。
もちろん、ハードルはあります。
費用もかかります。
他人が同行することへの抵抗もあるでしょう。
それでも私たちは、その不安を支えるために存在しています。
世の中の前提は、まだ
「医療が必要=旅行は難しい」です。
でも、それは本当に本人が望んだ前提でしょうか。
「迷惑をかけるから」
「大変だから」
そう言って、行きたい気持ちを飲み込んでしまう人を、私は何度も見てきました。
本当に“できない”のでしょうか。
できないのではなく、
「選択肢があることを、まだ知らない」だけかもしれない。
私たち事務局は、
ご本人・ご家族への丁寧なヒアリングはもちろん、
主治医や医療機関とも連携を取りながら、
できる限りリスクを減らす準備を重ねていきます。
不安を一つひとつ整理し、
「難しい」を「現実的」に変えていく。
その積み重ねが、旅行の実現につながっています。
だからこそ、
「選択肢がある」ということを知ってほしい。
行った人で、後悔している人を私は見たことがありません。
むしろ聞くのは、
「もっと早く知っていれば」という言葉です。
この仕事は、
命を守るだけではなく、
人生の時間を守る仕事だと、心から思っています。
必要としている人に。
そして、いま諦めようとしている誰かに。
この存在が届きますように。




